検査所見
画像検査:
・腹部超音波検査:左側腎臓の尾側に不均一な低エコー性腫瘤を認めた(図1)。右側の腎臓は正常であった。
細胞診検査:
超音波ガイド下で腫瘤への穿刺吸引を行った。鏡検では不整形の間葉系細胞が少量採取された。
診断
各種検査結果より腎臓血管肉腫を疑った。確定診断には組織生検が必要であることを説明し、ご家族も希望されたため、腫瘍の摘出を計画した。
治療と経過
治療:手術予定日の当日、急にぐったりしているとのことで来院された。来院時には血腹と貧血(PCV12%)が確認された。輸血(※)を開始し、状態を安定化させたのち、片側腎摘出術を行った。開腹後、腫瘍の破裂と広範な出血を確認した。腎動脈、腎静脈、尿管を離断し、左側腎臓および腎臓腫瘤を切除した(図2)。また、脾臓および大網にも結節が認められたため、同時に切除を実施した。病理組織学的検査にて腎臓は血管肉腫、脾臓および大網の結節は、血管肉腫の転移であると診断された。
術後経過:手術後は集中管理下での治療を実施。術後2日目に退院となった。その後の治療計画としてご家族は健康寿命を最大限延長させることを希望され、化学療法(ドキソルビシン単剤プロトコール)を実施することとした。症例はおよそ6ヶ月間の抗がん剤治療を終え寛解状態であったが、術後11ヶ月目で腫瘍の肺転移が確認され、術後13ヶ月目に呼吸不全で亡くなった。肺転移病巣が進行するまで臨床症状は認められず、良好な生活を送ることができた。
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図1
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