この病気の初期は虹彩表面に色素沈着が認められるのみであることが多いです。色素沈着は局所的または多発的に数ヶ月〜数年かけて拡大します。虹彩の肥厚とともに瞳孔形の変化、眼球可動性の変化、続発性緑内障を引き起こします。進行すると眼球破裂による出血を起こします。転移率は19〜63%とされており、肺や肝臓などの腹部臓器に転移することがあります。虹彩への色素沈着は正常な猫でもみられる所見のため、早期腫瘍性疾患との鑑別が困難です。虹彩吸引バイオプシーや眼房水の生検などの報告がありますが、有用性については不明です。両眼性のFDIMに関する既報はないため、片側性の虹彩色素沈着、緑内障、虹彩の肥厚などが早期診断につながる可能性があります。治療は基本的に眼球摘出になります。近年ダイオードレーザーを用いた虹彩焼灼術の報告があり、有用性の検討が期待されます。
各種検査結果より、眼球のメラノーマによる眼球破裂と診断した。
出血や感染をコントロールするためには眼球および腫瘤の摘出が必要であり、ご家族も希望されたため、腫瘤の摘出を実施した。腫瘤は巨大であった(図2)が、なんとか切除可能であった(図3)。摘出した腫瘤は病理組織学的検査にて猫びまん性虹彩メラノーマと診断された。腫瘍組織は眼球内にとどまらず、強膜外に浸潤し、脂肪組織や骨格筋組織など眼球周囲組織にまで浸潤していた。
手術後は集中管理下での治療を実施。体調はすぐに回復し、術後2日目に退院となった。術後は補助的なメトロノミック化学療法を実施することとした。症例はおよそ6ヶ月間寛解状態であったが、術後6ヶ月目で腫瘍のリンパ節転移が確認された。現在術後9ヶ月になり、リンパ節の腫脹は認められるものの、体調は良好に過ごせている。
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